top of page
PRFlogo白線抜き (4).png
GettyImages-1257057803.jpg

人の手で作られた差別は、

人の手でなくすことができる。

女性リーダーたちよ、

ともに「こんな世の中」を変えよう

ある1人の女性の寄付から始まった女性リーダー支援基金。日本に残る根深いジェンダーギャップを解消するために政治分野や社会活動における女性リーダーを支援しようとするプロジェクトは今年で5回目を迎える。これまでに基金の支援を受けた中には、選択的夫婦別姓制度や芸能界の労働・ハラスメント問題、医療界やテクノロジー業界、地方におけるジェンダー不平等などを多様な社会課題を解決しようと奮闘する女性リーダーがいる。

2025年7月15日、5回目の応募を広く呼びかけるために、基金の審査委員長を務める上野千鶴子さんによる特別セミナーを開催。なぜジェンダー不平等は生まれ、解消していないのか。歴史や知識、そして現状について学んだ。

穏やかな海

2024年のNHK連続テレビ小説『虎に翼』の時代、既婚女性は「無能力者」と呼ばれました。この時代と比べれば、日本社会の男女平等は進みました。しかし、2025年の日本のジェンダーギャップ指数は148カ国中118位で、引き続き主要7か国(G7)で最下位。国内では正社員の男女賃金格差が徐々に縮まるなどしているものの、変化の速度は諸外国に比べて遅いのが現状です。例えば、男女間の賃金格差の国際比較では、OECD 38カ国中、日本は韓国に次いで下から2番目に位置しています。

なぜ日本では、依然として男女格差がなくならないのでしょう?

その答えを考えるヒントは、日本の社会構造に隠されています。

日本人女性の7割が働いているが、その6割は非正規雇用

世界的に見て、日本の女性はよく働いています。日本の生産年齢人口(15~64歳)の女性の労働力参加率は、ここ10年でEU諸国やアメリカを抜き、2020年には7割を越えました。女性の結婚・出産による労働市場からの離脱が少なくなり、女性の年齢階級別労働力率のグラフはM字から台形に。ただし、女性は年齢が上がるほど非正規雇用率が上がるため、正規雇用の率を示すグラフはM字どころかL字を描いています。

年々増加する共働き家庭の数は、日本がサラリーマンの夫の収入に加えて妻の収入がなければ世帯の生活水準が維持できない社会になったことを物語っています。とはいえ、妻は家計補助収入にとどまるケースが多いため、1985年に約3割だった日本の女性の非正規雇用率は現在約6割になっています。

つまり今、日本の女性の10人に7人以上は働いているけれど、そのうちの10人に6人近くは非正規雇用なのです。

日本の職場では、非正規雇用労働者の方たちは弱い立場に置かれています。実際に現場からは「業務内容や責任は正社員と同じなのに、正社員と比較して賃金が安い」「業務の改善や提案があっても正社員には言わないようにしていた」「毎日がハラスメント」といった声が聞かれます。


特に大きいのが、賃金が正社員の2/3から1/2ほどだという問題です。この賃金格差に経済合理的な理由はないため、これは身分格差という他ないでしょう。結婚で離職するとしないとでは、生涯年収に2億円の差があるとするデータもあります。


日本の職場文化に意欲をそがれてきたのは、非正規雇用の人たちだけではありません。これまで、女性たちは家庭責任があるから働く意欲を持てないと言われてきましたが、社会学者の大槻奈己さんは職場にも問題があることを指摘しました。IT企業での採用後、10年働いた総合職のシステムエンジニアの比較研究で、女性SEは保守点検業務に固定されやすく、男性SEは新規プロジクトや顧客対応に配置されやすい傾向があり、結果として10年でスキルやポジションの差がついたと実証したのです。


こうした「女向き配置」「男向き配置」は、生涯にわたり男女平等に働けるイメージを抱かれやすい公務員の職場にも存在します。『女性公務員のリアル』(学陽書房、2023年)を書いた佐藤直子さんは、初職から入職以来の配置転換の中で、男性公務員はマネジメントを学んだり、人脈を得られたりするポジションを異動する一方、女性公務員は福祉職や出向に張り付けられるため、その結果スキルやポジションに差が出ることを明らかにしました。

「男女雇用機会均等法」「労働者派遣事業法」「第三号被保険者制度」で
トクをしたのは?

「令和四年版男女共同参画白書」の発表時、当時担当大臣だった野田聖子さんが「もはや昭和ではない」と言いました。この発言は、日本のほとんどの制度や法律が、サラリーマンの夫と専業主婦の妻、子ども2人からなる「昭和型標準世帯モデル」を想定して設計されているため、現代には合わなくなっていることを意味します。

「令和四年版男女共同参画白書」には、「税制、社会保障制度、企業の配偶者手当といった制度・慣行が、女性を専業主婦、また妻は働くとしても家計の補助というモデルの枠内にとどめている一因ではないか」という一節があります。

ここで言う「制度・慣行」の一つが、昭和36(1961)年にできた配偶者控除です。さらに、昭和60(1985)年には第三号被保険者制度が、昭和62(1987)年にできた配偶者特別控除ができました。

配偶者控除とはいわゆる「103万円の壁」で、「内助の功へのご褒美」と言われました。年収130万円までの妻は専業主婦とみなし、夫が社会保険料を負担しなくても妻の基礎年金権を得られるという第三号被保険者制は、「来たるべき高齢社会に介護をしてもらうご褒美」と言われました。

これらの制度は間違って「専業主婦優遇策」と呼ばれました。しかし、実際にトクをしているのは誰でしょう? まず、三号被保険者制度によって、妻の社会保険料を負担しなくてよくなった夫。次に、年収130万円までは社会保険料を負担しなくて済むようになった妻の雇用主。そして、就労調整をする主婦パートを低賃金で雇うことができる雇用主。おそらく多くが男性です。

確かに、1985年の男女雇用機会均等法から始まり、日本では男女平等法制が整備されてきました。一方で、これらのほとんどが罰則なしの努力義務規定のみで実効性がありません。

また、その裏では労働法制の規制緩和が着々と進んでいました。雇用機会均等法と同じ1985年に労働者派遣事業法ができ、その後、規制緩和に次ぐ規制緩和で、ほとんど全業種で一日派遣ができるように。不安定な雇用を許容する仕組みを、政治が作り出してきたのです。

これらにゴーサインを出したのは、政財界に加えて労働組合のエリート男性労働者たちです。一方で、不安定な低賃金労働にかり出された女性たちは、「働いても低賃金で貧乏、老後も低年金で貧乏、死ぬまで貧乏」という、評論家の樋口恵子さんがいう「BB(=貧乏ばあさん)問題」に悩まされることになりました。

1985年は
「女性の分断」元年、「女性の貧困」元年、「女女格差」元年だった

「男女雇用機会均等法」「派遣事業法」「三号被保険者制度」の三つは、同じ1985年に制定されています。その結果、この年に女性たちは「男並み総合職」「女並み非正規職」「育児・介護従事者」に三層分解させられたのです。

男並みに働ける女は男並みに使い倒そう。男並みに働けない女性は二流の労働力である非正規職に甘んじてもらおう。育児介護を担う人たちには、わずかなご褒美をあげよう――。誰かのそんな声が聞こえてくるようです。

そして、1985年は、「女性の分断」元年、「女性の貧困」元年、「女女格差」元年となりました。

1985年にできた三つの法や制度は、男性が主な稼ぎ手である社会を守った代わりに、女性の性別役割分担を変えました。かつての「男は仕事、女は家庭」は、「男は仕事のみ、女は家事・育児・介護と家計補助型の仕事の二重負担」へと変化。中には、総合職で男並みに働いて家計を支えるスーパーウーマン型の女性も出てきましたが、ケア労働のサポートを受けられるごく一部の例に過ぎませんでした。

お母さんと赤ちゃん

社会学者の橋本健二さんは『新・日本の階級社会』(講談社、2018年)で、1978年からの40年で、「低学歴、若年、非正規、単身、およびシングルマザー」の人たちで構成される1千万人近いアンダークラスが生まれたとし、21世紀に階級という言葉が蘇ったと言います。

本書には、「貧困になったのは本人の努力が足りないからだ」という自己責任論が、経済階層の高い人たちのみならず、アンダークラスの4割近い人たちにまで浸透しているというデータがあります。一方で、それを否定する数が最も多いのはパート主婦で、この人たちが「自分が今の状況にあるのは社会が間違っているからだ」と思っているのはこの国のわずかな希望です。

橋本さんは、「日本では階級がジェンダー化されており、ジェンダーが階級化されている」とも言います。日本では、男女の間に階級があるというのです。

事実、大卒の男女の賃金格差と高卒の男女の賃金格差の年代別変化をグラフにすると、大卒女性の賃金カーブと高卒男性の賃金カーブはほぼ一致します。つまり、女性が高学歴になったとしても、学歴の投資効果はないのです。教育社会学者の本田由紀さんは、こうした傾向は東大卒の男女であってもほぼ変わらないことを実証しています。

差別を組み込んだシステムで貧しくなる日本企業

日本の企業を「差別型企業」と「平等型企業」に分けると、平等型企業ほど売上高経常利益率が高いと証明した経済学者がいます。また、日本政策投資銀行の特許開発に関するデータでは、あらゆる分野において男性のみのチームよりも男女混成チームの方が生み出す経済価値が高いことが明らかになっています。他にも、男女共同参画にはイノベーションが進む、組織内コミュニケーションが円滑になる、業績が伸びるなど、さまざまなポジティブな効果があるとするデータは数多く存在します。


しかし、先の経済学者は、「企業が経済合理性を追求するものであるにもかかわらず、差別型企業は平等型企業に自ら変革して移行しようとしない」という結論に至っています。日本の組織では、日本型経営の新卒一括採用、年功序列給与体系、企業内組合など、差別を組み込んだ均衡があるため、経営面で大きなマイナスもないのに、その均衡を崩す動機付けがないというのです。
 

社会学者の山口一男さんは、この差別的な均衡を「劣等均衡」と呼び、これが続いた結果、女性の能力の無駄遣いという貨幣には現れない形の損失(=「外部不経済」)を生んでいると指摘します。さらに、「女性が昇進できないのは、管理職の長時間労働が昇進の条件になっているからである」とも明言しています。

 

日本企業は経済合理性では動かず、労働者の能力よりも組織への忠誠心を評価してきました。男性同士のつながりばかりが優先されるため、女性が正式なプレイヤーとして招き入れられにくく、女性たちもそれをあまり望まない。それが日本の企業文化です。
 

しかし、企業が商品市場、労働市場、金融市場の三つの市場で競争しなければならない以上、性差別のツケは必ず回ってきます。ローカルマーケットの集積である商品市場では、多様性の高い組織の方が優位でしょう。労働市場では今、性別を問わず共働きしやすい企業に人が集まるでしょう。金融市場では、売上高経常利益率が高い企業の方が投資家を引きつけるはず。
 

現在、日本のGDPは世界4位。しかし、国民一人当たりGDPは38位(2024年)、労働生産性はOECD38カ国中29位(2023年)。1ドル140円台という円安は、すでに国際社会で日本の評価が著しく下がっていることを示しています。

こうした現状を打破しようと2003年、小泉政権は「2020年までに、社会のあらゆる分野において指導的地位の女性の割合を30%に」という数値目標を掲げました。しかし、これも努力義務のみで強制力がなかったため実現されませんでした。

 

もちろん、必ずしも女性がリーダーであればいいというわけではありません。例えば政治分野では、各国で女性政治家が一定程度増えた成果が見られるようになった一方で、政治家は男女問わず性別より政党ファーストだと分析するデータもあります。

 

その中で、私たちのパブリックリソース財団の女性リーダー支援基金が、20代、30代の地方議員を増やす活動しているFIFTYS PROJECTの皆さん、女性議員を応援するStand by womanの皆さんなど、政治の場でジェンダー平等を達成しようとしている頼もしい若い世代の女性リーダーたちを支援してきたのは誇りです。

若い世代が希望を持てない社会を変えるために

グローバリゼーションの中で、すべての国で女性の労働力化はマストになりました。働くことと産むことは逆相関すると言われてきましたが、今日では、女性の就労率が上がれば上がるほど出生率が上がるというデータが出ています。

ネオリベ改革の中で、諸外国が30年間、家事、育児、介護などのケア労働を女性の肩から下ろす方法を模索してきた結果、2通りの解決策が見られるようになりました。一つはケアをアウトソーシングする方法、その中には公共化オプションと市場化オプションの2つがあります。もう一つは家庭内で男女が夫と妻ができるだけイーブンにケア負担を背負う方法です。ただし、後者は男女の賃金格差があるためほとんど見られません。

 

その結果、世界では夫婦に大きく3つの型が生まれました。一つ目は、夫婦が共に働き、それをケアに関する公共化オプションが支える「北欧モデル」。これは、所得税率50%、消費税率25%という高い国民負担に支えられています。二つ目は、夫婦が共働きで市場からケアサービスを買う「アングロサクソンモデル」で、これは安い移民労働力により支えられています。三つ目は、男性が主な稼ぎ手となりケアを家族の女性が担う「南欧モデル」。日本や韓国はこれに当たりますが、このモデルはケア労働を支える選択肢がないため女性にしわ寄せが来ます。なお、中国は改革開放市場化しましたが、ケアを祖父母力頼みで解決する「アジア型解決」が主流です。

 

日本と韓国の両国では、晩婚・晩産化の後、非婚化と少子化が覆せない形で進んでいます。どちらの国でも、家族や子どもを持つことで生じる負荷が女性にばかり偏ったことや、男性の家族形成コストが高くつくようになった結果、男女ともに家族形成自体を回避するという傾向が見られるようになっているのです。

 

各国の出生率を国際比較すると、北欧モデルをトップに、アングロサクソンモデル、南欧モデルの順で下がっていきます。中でも、2023年に日本は1.20、韓国は0.72と際立って低い数字です。出生率とは、出産年齢の男女が、その社会の将来に希望を持てるかどうかの指標。日本は、若い世代が希望を持てない社会になっているということでしょう。

「こんな世の中」は、政治がもたらした人災。人が作った災厄は、人が変えることができます。『虎に翼』の時代とは違い、多くの女性たちが当然のように大学に行き、弁護士になれているように。

私たちが差別を黙って飲み込んで被害者であり続ければ、その差別は次の世代に繰り返され、今度は被害者が加害者になる可能性があります。もう、わきまえるのはやめましょう。『虎に翼』の時代に女性参政権運動を率い、戦後女性政治家となった市川房枝さんに続く「女性解放への長い列」に加わることが、私にも、皆さんにも要求されています。

Image by Ant Rozetsky

女性リーダー支援基金の第5回公募が
7月14日にスタート

「女性リーダー支援基金~一粒の麦~」は2021年に石川清子さんにより設立され、2024年度からは石川さんの意思を引き継いだ多くの支援者によって支えられる民間の基金です。

女性リーダー支援基金では、「構造化された男女格差を是正するためには、意思決定に参画する女性リーダーを増やすことが急務である」という石川さんの思いから、次世代女性リーダーの創生に取り組んでいます。これまで、政治家を志す女性の支援、選択的夫婦別姓制度の導入促進、ハラスメント相談センター設立など、さまざまな分野で活躍する女性リーダーたち25名が受賞し、審査員や勉強会講師、メンターなどのサポートを受けながら、そして受賞者同士励ましあいながら、活動の幅を広げてきました。

 

2025年7月14日には、支援対象者の第5回公募を開始しました。今回は、審査委員長に上野千鶴子氏、審査員に浜田敬子氏、及川美紀氏、小木曽麻里氏、能條桃子氏を迎え、女性リーダーとして今後の活躍が期待される個人を公募し、公正・中立な審査委員会の審議を経て、適切な対象者を選定します。

 

全国の「ジェンダー平等な社会にしたい」「リーダーになって社会をよくしたい」という思いを持つ女性たちからの応募をお待ちしています。

審査委員からのメッセージ

公募情報

  • 応募期間
    2025年7月14日(月)~ 8月29日(金)17:00まで
     

  • 支援対象分野
    ①政治家志望者 ※既に公職の議員や首長となっている場合、立候補表明済の場合等は除く
    ②社会活動(NPO・NGO・オンラインアクティビズム等)の実践者 
    ③社会起業家志望者 
    ④女性のためのアクションリサーチの企画・実践者

公募サイト内の応募フォームよりご応募ください

支援内容

女性リーダーとして今後の活躍が期待される個人を公募します。

活動奨励金: 1 人あたり100 万円

 

支援予定者数: 6 名程度

 

活動奨励金の他に、交流ミーティング、メンター制度、勉強会、研修会等の非資金的サポートを実施します。(サポート内容は変更となる場合もございますので、あらかじめご了承ください。)

​​

 

※基金の詳細はこちら

女性リーダー支援基金 | パブリックリソース財団 (public.or.jp)

https://www.info.public.or.jp/support-women-leaders

※2024年度活動報告はこちら

https://www.public.or.jp/post/support-women-leaders2024event

ご寄付のお願い

当基金では、女性リーダーの育成をさらに加速させるため、ご寄付を受け付けております。

皆様のご支援をお待ちしております。

※ 当基金へのご寄付は寄付控除の対象となります。

​銀行振り込みで寄付する場合

  1. こちらより寄付申込書(excel)をダウンロードし、必要事項を記入してください

  2. 寄付申込書記載のメールアドレスまたはFAX番号までご返送ください

  3. 寄付申込書記載の口座までご入金ください

  4. ​ご入金と寄付申込書のご送付が確認できましたら寄附金領収書をご送付いたします

​​

​オンラインで寄付する場合(クレジット決済、Amazon Payによる決済)

  1. 下記ボタンより寄付プラットフォーム「Syncable」の本基金寄付ページにアクセスしてください

  2. 案内に沿って寄付決済を行ってください
    「都度寄付」「毎月寄付」は『寄付する』ボタンから、「毎年寄付」は『年会費になる』ボタンから決済を行なってください

  3. 寄付金領収書は、寄付をされた翌年2月上旬までに「寄付金領収書」をPDF形式でメールにてお送りします(領収書の発行日付は12月末日となります)。なおPDFにつきましては「public-resources-foundation-receipt @ rbhop.eco-serv.jp 」というメールアドレスから送付させていただきます。翌年2月になっても届かない場合は迷惑メールフォルダ―をご確認いただき、それでも届いていない場合はお手数ですがお問い合わせ先までご連絡くださいませ

外部サイトに移動します

ご寄付のお願い

©2025 公益財団法人パブリックリソース財団

スライス1.png
bottom of page